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「歌のある生活」インターネットの世界の歌①

 皆さんは、いつどこで歌を詠まれるのでしょうか。ベテランの皆さんでしたら、いつでもどこでも、旅先や散歩中などは当然のこと、仕事中や休日も、リビングや就寝前や入浴中、もしかしたら夢の中でも作歌されているのではないでしょうか。常にさっと詠めるように、メモを持ち歩いている方もいるかもしれません。もしかしたら、メモの代わりにケータイメールやタブレット端末に打ち込むというモバイル歌人もいるかもしれません。

 けれど、そうして詠んだ歌を推敲し一首として完成させるのは、どこでしょうか。おそらくは、原稿用紙のある机の上か、プリントアウトするためのワープロやPC(パーソナルコンピュータ)の前ではないかと思います。

 私は、作歌をはじめて一〇年そこそこですが、いつも詠むのはPCの前。常にPCのディスプレイに向かい歌を詠んでいます。

 そうやってウンウン唸りながら歌を打ち込むわけですが、PCはインターネットにつながっている。クリックするとすぐにネットの世界がある。もう、誘惑がいっぱいある。なので、いつも作歌なんてそっちのけになって、ネットの世界で遊んでいます。

 さて、そのネットの世界ですが、あちらの世界にも歌人はいるわけで、毎日たくさんの歌が網目に漂っています。

 私が作歌をはじめた頃は、HP(ホームページ)が全盛で、個人でHPを作成しては、そこに自分の歌を載せている歌人が多くいました。けれど、そのうちネットの世界はHPからブログに移ります。ブログはHPよりもずっと簡便で、PCに打ち込んだ文がそのままブログのページになる。なので、詠んだ歌を日記がわりに毎日ブログに掲載する、という歌人もいました。

 そうこうしているうち、ネットの世界でも歌会が開かれたり、新聞投稿ならぬネット投稿が行われたりするようになっていきます。こうなると結社の活動と同様に双方向になりますので、見事にネットコミュニティができあがります。ネットを通じて互いに歌を発表し批評し合ったりするわけです。

 そんなコミュニティのひとつに笹公人が主宰する「笹短歌ドットコム」というのがありました。これは、笹が師範役としてお題(題詠)を出し、ネット上で投稿を募るというサイトでした。笹が、それら集まった投稿歌を選歌し批評するというもので、現在は休止していますが、つい最近まで六年間にわたり活動し、初期の活動は『笹公人の念力短歌トレーニング』(扶桑社、二〇〇八年)として本にまとめられました。これを開くと、夭逝の歌人笹井宏之をはじめ、やすたけまり、山田航、松木秀などが常連の投稿者だったことがわかります。ほかにも、笹の「未来」をはじめ「塔」「かばん」「短歌人」などの結社に入っている歌人が参加しており、多くの若手歌人が結社横断的にワイワイやっている、という雰囲気です。

 そこでの歌風といえば、笹が主宰しているので、おのずとそのような歌が集まってきています。私も何度か参加をしまして、題詠「人形・ぬいぐるみ」では、最優秀をいただいたりしました。

ぱっとみてムックの方が愛情を受けて育った顔をしている      桑原憂太郎

…とまあ、紙媒体の投稿欄でしたら選歌されないようなものも、そこそこ評価をされるのが、ネットの世界なのかもしれません。

 

「かぎろひ」2013年7月号所収