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「歌のある生活」インターネットの世界の歌②

 皆さんは、題詠はお好きでしょうか。

 ただし、好きだという人でも、一〇〇の題を順番に一年間かけて詠むというイベントの存在については、あまりに突飛すぎて、驚かれるのではないでしょうか。

 そんな酔狂なイベントがインターネットの世界では毎年行われています。

 五十嵐きよみの主宰する「題詠Blog」のサイトです。はじまりは、十年前の「題詠マラソン2003」というネット上のイベントでした。これは、先ほど申し上げた通り、一〇〇の題詠を順番に詠みこんで一〇〇首投稿するというイベントで、マラソンになぞらえて、一〇〇首詠みきった参加者を完走者と呼んだり、早く詠み終えた参加者から順位をつけて表彰したりしていました。

 こうして完走者が詠んだ歌の数々は、『短歌、WWWを走る。』(邑書林、二〇〇四年)というアンソロジーとしてまとめられもしました。当時、歌壇では時評などでも取り上げられて、ちょっとした話題になりましたので、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。

 この題詠のイベント、実は、現在でも毎年行われています。今年二〇一三年で、一一年目になります。例年、参加者は三〇〇名以上、完走者も一〇〇名を超えています。短歌のイベントとしては、なかなかの参加者数ではないかと思います。年齢層も幅広く、七〇代とおぼしきランナーも散見されています。

 昨年、二〇一二年がちょうどイベント一〇周年ということでしたので、記念誌の意味もこめて、またアンソロジーがでました。それが『短歌、BLOGを走る。2012』(牧歌社、二〇一三年)です。ここには、完走者一二九名のなかから有志三六名による四二五首がおさめられています。

 

とびっきり陽気に歌う鳥ばかり集まれパパゲーノの鳥籠に 五十嵐きよみ(題は籠)

ため息をついている人ばかり立つ飯田橋駅快速通過         村田馨(息)

やうやつと網にかかつた情報をつなぎ合はせて企画書を編む   桑原憂太郎(企)

軸足をいずこにせむか迷いつつ確信持てぬ論を説きおり     西中眞二郎(軸)

固めたる決意の隙を突くようにカレーうどんの汁は飛び散る   はぼき(カレー)

 

 ちなみに私、桑原憂太郎は、二〇〇四年より毎年参加、毎年完走をしていますので、これまで九年間で九〇〇首投稿したということになります。私のように、毎年参加している歌人もいれば、今回が初参加という歌人もいます。歌歴も、浅い方もいれば、歌集を出しているベテランの方もいますし、また、無所属の歌人もいれば、結社に所属している歌人までいろいろです。ついでにいうと、歌誌のペンネームとネット上のハンドルネームを使い分けている歌人もいて、出詠の名前だけでは誰だがわからなかったりします。

 主宰の五十嵐きよみは、一年でも長く続けていきたいと思う、と本書のなかで言っていますので、これからも毎年開催されるのではないかと思います。私は、だんだん体力(知力?)も落ちてきて、一〇〇首走りきるのもきつくなってきており、そろそろ辞めようかと思っておりますが…。

 そういうわけで、興味をもたれた方は、どうぞ「題詠ブログ」で検索してみてください。たくさんのランナーのたくさんの歌があふれています。イベントは毎年一一月までやっています。

 

「かぎろひ」2013年9号所収