2019-10-28から1日間の記事一覧

穂村弘『水中翼船炎上中』にみる、オノマトペ技法の効用

人や物の様子を形容したり説明したりするのに使われるオノマトペは、一般に慣用表現として広く意味が共有されている。そうした一般的なオノマトペは、慣用表現である以上、詩歌の修辞としては凡庸で平凡な表現という誹りを免れない。そこで、短歌形式では、…

穂村弘『水中翼船炎上中』を読む4

穂村弘『水中翼船炎上中』には、注目すべき社会詠が散見される。ここを評しておかないと、この歌集を読み解いたことにはならないであろう。 有名な一首。 電車のなかでもセックスをせよ戦争へゆくのはきっと君たちだから この作品は主題を上句とするか下句と…

穂村弘『水中翼船炎上中』を読む3

穂村弘の新歌集『水中翼船炎上中』を引き続き見ていこう。 この歌集には、母の死を詠った一連「火星探検」がある。集中の白眉といってもいいだろう。いわゆる挽歌といえるのだが、では、現代短歌の挽歌を読み解いていこう。 月光がお菓子を照らすおかあさん…

穂村弘『水中翼船炎上中』を読む2

前回、穂村弘の新歌集『水中翼船炎上中』を取り上げたが、せっかくなので、もうしばらくこの歌集を読み解くことにしよう。この歌集の構成は、現在から、少年時代の回想へ向かい、青年期へ行き、母の死をむかえ、再び現在に戻るという構成になっている。少年…