『瞑鳥記』 伊藤一彦歌集
伊藤一彦の第一歌集が、現代短歌社の第一歌集文庫シリーズよりこの度復刊された。反措定出版局によって一九七四年に出版された「瞑鳥記」一九五首ならびに福島泰樹による濃厚な解説もそのまま再掲。さらに、今回の復刊にあたっては、初期歌篇「未明まで」六三首と大口玲子の解説が新たに加えられている。歌集を開けば、時代性ということもさることながら、当時の二十代インテリ層の詩情が、どのあたりにあったのかを窺い知ることができる。
水中のようにまなこは瞑りたりひかるまひるのあらわとなれば
畢竟はかなしみとなる怒りかも雨降りしぶく冬桜道
また、詠まれている鳥たちは、青年歌人のストイックな情感を表していよう。
ひたぶるにあゆむ雪野ぞ鳥類はかくしずかにも病み痩せている
韻律の森より翔べる鳥あれば血しぶきながらわれは見ている
(現代短歌社 〒一一三―〇〇三三 東京都文京区本郷一―三五―二六 電話〇三―五八〇四―七一〇〇 定価六六七円+税)(桑原憂太郎)
2013年「短歌人」3月号所収