2018-01-01から1年間の記事一覧

穂村弘『水中翼船炎上中』を読む1

前回までの議論を、とりあえずまとめる。 穂村弘の作品には、現代的な素材で抒情させようという作品が一定数あり、読者は、その作品でうまく抒情できれば「わかる」し、抒情できなければ「わかならい」ということになるのではないか、いうことであった。 こ…

「歌のある生活」32「わからない」歌2

穂村弘の初期の代表的な作品から「わからない」とされる歌を見ていこう。第1歌集『シンジケート』より、この作品。 ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり 「嘘つきはどらえもんのはじまり」で、はあ?となるが、そこは後で議…

「歌のある生活」31「わからない」歌1

私たちは、しばしば「わからない」歌に出会う。そんな「わからない」歌を「わかる」歌にしよう、そして、できるなら「いい歌だな」と思ってもらえるようにしよう、というのが、ここからしばらくの話題である。 ここで取り上げていく「わからない」歌というの…

ウォルトンの交響曲1番について

ここのところ、繰り返し聴いているのは、W.ウォルトンの交響曲第1番。 ウォルトンは20世紀イギリスの作曲家。作曲はほとんど独学だったというが、イギリスのみならず、20世紀を代表する作曲家の一人といってよい。 映画音楽でも有名。20世紀の作曲…

「歌のある生活」30「音楽」の歌その17

音楽の歌、「リズム」「メロディ」ときて、今回は「ハーモニー」です。これは、これまでの「リズム」「メロディ」よりも詠うのが格段に難しい。なぜなら、ミミオクでハーモニーを響かせるのは、読者にも作者にもそれなりの音感が必要とされるからです。です…

「歌のある生活」29「音楽」の歌その16

前回の続きです。流行歌の歌詞を一首に挿入した作品を鑑賞します。前回は茂吉を紹介しましたが、今回はグッと最近の作品から。 懐かしのヒーローアニメ主題歌の「♪だけど」の後が沁みる夜更けぞ 笹公人『叙情の奇妙な冒険』 笹公人です。ここでは、「あした…

柊明日香『そして、春』書評

温かい歌集である。読むと、胸の深いところからほーっとする気持ちになる。それは、なによりも著者である柊明日香の人柄なのだろうと思う。短歌は、何を題材にしてもどんな風に歌っても許されるけど、やっぱり温かい人柄の歌人が紡ぐ温かい歌は、読者を幸せ…

「歌のある生活」28「音楽」の歌その15

前回の続きです。前回は、「メロディ」を隠喩とした斬新な歌を三首紹介しました。 ただし、石田比呂志も杉﨑恒夫も、その曲を知っていれば、その隠喩の効果がわかりますが、曲を知らなければ、さっぱりこの作品を鑑賞できないという残念さがあります。そこが…