2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

短歌の「リアル」⑥~口語短歌編その1

前回は大辻の論考を引用しながら、<リアルの構造>について議論した。 <リアル>というのは、要は<本当>のことだ。つまり、読み手側からすれば、一首を読んで、ああ、これは本当のことを詠っているに違いない、と思えば、それは<リアルな歌>、というこ…

短歌の「リアル」⑤~文語短歌編

前回までは、穂村弘の論考を参照しながら、<リアルの構造>について考えてみた。 今回からは、また違った視点から<リアルの構造>について考えよう。 なにも短歌は、「具体的」で「小さな違和感」を詠えばリアリティが担保される、というわけではない。短…

短歌の「リアル」④

前回の終わりに引用した、穂村の一文の解読からはじめよう。 この文章だ。 これらを写実的リアリズムの影響下に、その一部をツール的に技法化した表現とみることもできそうだ。(穂村弘『短歌の友人』河出書房新社) ひとつひとつみていこう。 まずは、「写…

短歌の「リアル」③

前回までと同様、穂村の論考をもとに進めていこう。 穂村弘は、吉川宏志の作品から、リアルの「構造」を抽出している。 それは、こういう歌からだ。 門灯は白くながれて焼香を終えたる指の粉をぬぐえり 吉川宏志 秋陽さす道に棺をはこびだし喪服に付いた木屑…