2017-01-01から1年間の記事一覧

「歌のある生活」27「音楽」の歌その14

今回からは、音楽の歌のなかでも「メロディ」の歌を鑑賞します。 けれど、ひとくちに「メロディ」の歌といっても、いくつかの種類に分けることができますので、ちょっと整理しながら見ていくことにしましょう。 まずは、一首を読むと、頭の中にメロディが思…

「歌のある生活」26「音楽」の歌その13

前回の続きです。永井陽子のこの歌の鑑賞をします。 べくべからべくべかりべしべきべけれすずかけ並木来る鼓笛隊 永井は、鼓笛隊の行進のリズムを詠いたかったのでした。大太鼓や小太鼓が打つタンタンタンという二拍子のリズムをどうにかして短歌にしたかっ…

「歌のある生活」25「音楽」の歌その12

かれこれ二年間にわたって、音楽を題材にした短歌についてあれこれとおしゃべりをしてきましたが、そろそろ本題(!)に入りたいと思います。 音楽を題材にするのであれば、一首から音楽が聴こえるべきである、というのがここでの私の主張です。いうなれば、…

「歌のある生活」24「音楽」の歌その11

ポピュラー音楽についての二回目です。ポピュラー音楽というのは、クラシック音楽と比べて、音楽そのものを詠うのが難しい。なぜなら、その音楽を知らなくちゃあ読者は共感しようがないからだ。そこで、どうしても社会風俗を主題にして、そのモチーフとして…

「歌のある生活」23「音楽」の歌その10

音楽を題材にした短歌についておしゃべりしていますが、これまではクラシック音楽ばかりを取り上げてきました。けれど、短歌に詠われている音楽は何もクラシックばかりではなく、邦楽や洋楽の流行歌いわゆるポピュラー音楽も当然ながらありましょう。そこで…

カバレフスキーその2

カバレフスキーでわりと有名な曲に、歌劇「コラ・ブルニョン」序曲がある。 これは、ディスクも豊富。5分程度の小品ですぐ聴ける。 バースタインの「キャンディード」序曲のソビエト版みたいといえば、ピッタリな感じ。速いテンポで曲想がめまぐるしく入れ…

カバレフスキーのこと

春である。 春にあう音楽はなんだろう。 人によっていろいろだろうが、私の場合は、カバレフスキーだ。彼の音楽は、雪解けの春先にぴったり合うと思うのだが、今のところ賛同する人に出会ったことはない。 数年前、春にカバレフスキーを聴く、という内容の短…

リスペクト・ブックス

『月とマザーグース』松川洋子(2012年、本阿弥書店) 今年めでたく卒寿を迎えた松川洋子の第六歌集。人生の先達に相応しい味わい深い作品のなかに、キャリアを感じさせないお茶目な歌がはさまれていて、びっくりします。老いてなお溢れる彼女の瑞々しい…

「歌のある生活」22「音楽」の歌その9

前回の続きです。塚本の歌をもう一首とりあげましょう。 春雪にこごえし鳥らこゑあはす逝ける皇女のためのパヴァーヌ 塚本邦雄『水葬物語』 フランスの作曲家ラヴェルの小品が詠われています。下句の「逝ける皇女のためのパヴァーヌ」です。ただし、邦題は「…