2019-01-01から1年間の記事一覧

短歌の「調べ」について①

今週より話題を変える。 「調べ」の謎について考えたい。 「調べ」とは何か、なかでも短歌の「リズム」とは何かについてしばらく、おしゃべりする。 まずは「調べ」とは何かについて考えてみよう。短歌には「調べがいい」歌と「調べが悪い」歌がある。「調べ…

歌会についての雑感その④

歌会の話題も4回目である。 前回、私が提出した主張は、こうである。 歌会での読みは、鑑賞よりも批評のほうがいいし、その批評も、印象批評より、形式主義的な批評のほうがいい。 ということだった。 どうして、そう主張するのかについては、前回の文章に…

歌会についての雑感その③

歌会の話題の3回目。 今回の話題は、歌会に限ったことではないけれど、作品と作者の距離をいかにとるかという話。 これは短歌の世界では実に難しい。 例えば、誰でも知ってる石川啄木の歌に「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」が…

歌会についての雑感その②

歌会についての雑感の2回目。 互選の話題から 歌会によっては、互選をしたりしなかったりするが、これは、メンバーで決めればいい。私は、互選は一長一短があるので、どっちでもいいと思う。 互選のあったほうが、ゲーム性が高まるし、必然的に詠草に序列を…

歌会についての雑感その①

「歌壇」11月号(2019年)の高野公彦の文章に、その昔、コスモスの東京歌会で、宮柊二が提出した歌を若い女性が酷評して、あとで作者名が判った時、女性はショックのあまり泣き出した、というエピソードが載っていた。 このエピソード、短歌の世界ではわ…

穂村弘『水中翼船炎上中』にみる、オノマトペ技法の効用

人や物の様子を形容したり説明したりするのに使われるオノマトペは、一般に慣用表現として広く意味が共有されている。そうした一般的なオノマトペは、慣用表現である以上、詩歌の修辞としては凡庸で平凡な表現という誹りを免れない。そこで、短歌形式では、…

穂村弘『水中翼船炎上中』を読む4

穂村弘『水中翼船炎上中』には、注目すべき社会詠が散見される。ここを評しておかないと、この歌集を読み解いたことにはならないであろう。 有名な一首。 電車のなかでもセックスをせよ戦争へゆくのはきっと君たちだから この作品は主題を上句とするか下句と…

穂村弘『水中翼船炎上中』を読む3

穂村弘の新歌集『水中翼船炎上中』を引き続き見ていこう。 この歌集には、母の死を詠った一連「火星探検」がある。集中の白眉といってもいいだろう。いわゆる挽歌といえるのだが、では、現代短歌の挽歌を読み解いていこう。 月光がお菓子を照らすおかあさん…

穂村弘『水中翼船炎上中』を読む2

前回、穂村弘の新歌集『水中翼船炎上中』を取り上げたが、せっかくなので、もうしばらくこの歌集を読み解くことにしよう。この歌集の構成は、現在から、少年時代の回想へ向かい、青年期へ行き、母の死をむかえ、再び現在に戻るという構成になっている。少年…