2021-01-01から1年間の記事一覧

<文体>についてのまとめ②

前回、短歌の<文体>について、3種類提出した。 すなわち、 ・「近代短歌」の「私=作者」である<文体> ・「前衛短歌」からはじまる、主体の見たことや考えたことや感じたことを、作者が主体に代わって叙述する<文体> ・穂村の作品のような「語り手」…

<文体>についてのまとめ①

今回からは短歌の<文体>について、まとめていきたい。 本Blogでは、主に<私性>をテーマとして、9回にわたって議論した部分である。 そもそも短歌の<私性>と<文体>は、いかなる関係があるのか、というと、これは大ありで、というのも、「近代短歌」…

<調べ>についてのまとめ④

さて、ここまでは、強弱2拍子説で8音までの増音では<調べ>が崩れないことを検証した。 この話題の最後に、どうにも<調べ>が良くない作品をみて、その良くない原因を探ってみたいと思う。 ただ、近代短歌はもちろんのこと現代口語短歌だって、<調べ>…

<調べ>についてのまとめ③

今回は初句6音の検討からはじめる。 半年前雪が積もった 半年前人にもらったUSBだ 永井祐『広い世界と2や8や7』 日曜から土曜にわたる階段で僕は平たいアメーバになる この2首は、初句を4音2音に分けることができる。そして、強弱2拍子で読み下す…

<調べ>についてのまとめ②

<調べ>についての議論で、筆者は、次の説を提出した。すなわち、 ・短歌の<調べ>は、「強弱2拍子」で読み下せるものが良い という説だ。 しかし、この説が正しいとするなら、必然的に、次のような仮説が成り立つ。 すなわち、 ・3句以外は、8音までは…

<調べ>についてのまとめ①

このBlogでは、短歌についてのあれこれについてのお喋りを1年以上ダラダラと続けている。 思いついたテーマを思いついたままに述べてきたので、だんだんと収拾がつかなくなってきた。なので、ここで一旦、まとめに入りたいと思う。 そもそものはじまりは、…

短歌の<比喩>③

<比喩>の話に戻る。 短歌の世界の<比喩>表現として、「短歌的喩」と呼ばれるものがある。 これが、なかなか面白い。 この「短歌的喩」は、吉本隆明が提唱した概念で、短歌のみにあらわれる独特の比喩の働きをいう。概略をかいつまんでいえば、短歌を上句…

再び短歌の「読み」について

短歌の<読み>についての議論で、典型的な事例があったので、今回はそれを取り上げてお喋りをしたい。 角川「短歌」2021年1月号に、新春特別座談会「見つめ直す自己愛」が掲載されている。この座談会では、馬場あき子、伊藤一彦、藤原龍一郎、小島ゆか…

短歌で虚構をやる理由②

あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたします。 少し前に、去年の角川短歌賞受賞作品の田中翠香「光射す海」の虚構性について議論した。 この作品は、シリア内戦に赴いた戦場カメラマンを主人公とした50首連作なのだが、作者は、戦場…