2020-01-01から1年間の記事一覧

連作の「読み」とは②

短歌の「連作」についての2回目である。 前衛短歌運動のなかで勃興した、大きな主題を扱う「連作」については、前回否定的に述べた通りである。 では、そうした前衛短歌運動での「連作」ではなく、数首詠ったものを、順番に並べるようなよくある連作という…

連作の「読み」とは①

今回から短歌の「連作」について、議論してみたい。 短歌を一首単位ではなく、「連作」として、意識的に創作されたのはいつからだろうか。 と、考えると、古典和歌にまでさかのぼってしまうのだけど、そこまでさかのぼる余裕はない。なので、『万葉集』に連…

短歌の一首評について

下にあげるのは、河野裕子の作品である。 限りある生を互みに照らしつつほたるの点滅に息合はせをり 河野裕子『桜森』1980年刊 たとえば、私が、この歌を批評せよ、と言われたら、粗々こんな感じになる。 上句で主体は蛍へ心を寄せているのがわかる。初…

短歌の「読み」について②

「読み」の話題に2回目である。 鶴田の時評の関係部分をもう一度、引用しよう。 その頃(二〇年以上前―引用者)の批評会は、もう少しテキスト寄りであった。助詞・助動詞の使い方の細かい指摘や表現上の粗さ、癖などを厳しく読み、やわらかい雰囲気というよ…

短歌の「読み」について①

今回は、予定を変更して「読み」の話題について議論しよう。 角川「短歌」4月号時評、鶴田伊津「ひとかけらの真実」(2020.4)に次のような「読み」の話題がある。 その頃(二〇年以上前―引用者)の批評会は、もう少しテキスト寄りであった。助詞・助動詞の…

短歌は芸事である

短歌は「芸事」である、の話の続きである。 そもそも「芸事」と「芸術」はどう違うか。 たとえば、美術というジャンルについて。 私は美術には明るくないが、美術大学というのがあるんだから、美術には普遍的な理論があるんだろう。つまり、その道の研究者で…

結社とは何か?

短歌の世界には「結社」というのがある。「短歌結社」とは、何だろうか。「短歌同人」「短歌同好会」「短歌サークル」とは違うのであろうか。 答えを先に言うと、そうしたものと「短歌結社」は決定的に違う。 違うからこそ、「結社」という名称で、「あさ香…

短歌は文学か?

短歌とはどのような詩形なのか。 ということを、前回までは、短歌の「調べ」について、なかでも「リズム」についてお喋りをしてきた。 昨年末から長々と続けてきたのだが、今回からは違う話題で、短歌について考えていきたい。 さしあたっては、他の文芸ジャ…

小池光「短歌を考える」を考える⑦

さて、増音の次は減音である。 小池によると、初句減音結句減音二句減音四句減音三句減音 の順番に重要ということのようだが、この重要度は話が進んでいくうちに、忘れられてしまって、初句減音以外は、全部禁制、ということになってしまった。 つまり、小池…

小池光「短歌を考える」を考える⑥

前回からの続き。 E4句増音 増音の最後は、4句である。これが、もっとも許容される「破調」であるという。 それは、「下句の七七が、たたみかけ、加速度感を持つ傾向にあるため、一層自然に四句の増音が可能になっている」からだという。 つまり、もともと…

小池光「短歌を考える」を考える⑤

破調の話の2回目である。 小池光「リズム考」(「短歌人」1979.7~1980.12)より。 C結句増音 小池光が、初句増音、3句増音に続いて重要とする破調は結句である。 結句7音節は、4拍子説で言えば、8音までであれば、44型、35型、53型…

小池光「短歌を考える」を考える④

小池の「リズム」考では、「破調」についてユニークな論述がある。 今回からは、これを検討することにしよう。 小池は破調を10に分ける。(「リズム考」(「短歌人」1979.7~1980.12)または、「短歌を考える」(「短歌研究」2007.4~…

小池光「短歌を考える」を考える③

前回の小池説の検証である。 短歌の下句は、どのような並びが「調べ」がいいかという問題であった。 小池説によれば、3443型が良い、ということである。 では、例によって、いつもの茂吉の歌をだしてみよう。 最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとな…

小池光「短歌を考える」を考える②

前回みてきた、小池の「リズム」の議論は、大枠は「短歌4拍子説」を補完しているに過ぎない、といえるのであるが、7音節の議論の部分に、新しい論点を示している。 短歌で言うと2句4句5句が7音節であるが、前回の議論のなかで小池は、 「マツモトキヨ…

小池光「短歌を考える」を考える①

今回からは、小池光による「リズム」の議論を取り上げたい。 小池には、これまで「リズム」に関する、2つの雑誌連載がある。 ① 「リズム考」(「短歌人」1979.7~1980.12 但しこの連載については『街角の事物たち』(五柳書院、1991)に所…

短歌の「調べ」について⑧

そろそろ、違う話題に入りたい感じがするが、前回の続きである。 「4拍子説」より「強弱2拍子説」のほうが短歌のリズムを説明するときに優れているのは、例えば次のような作品に顕著だ。 うらうらに照れる春日に雲雀上がり心悲しもひとりし思へば 大伴家持…

短歌の「調べ」について⑦

石井辰彦の短歌「強弱2拍子」説というのは、わりとシンプルな説で、要は、短歌は各句を等時拍で強弱の2拍子で読むことができる、ということである。 では、いつもの茂吉の例歌をだしてみよう。 もがみがわ/さかしらなみの/たつまでに/ふぶくゆふべと/…

短歌の「調べ」について⑥

「音歩」の話題の続きである。 今回からは、石井辰彦の「音歩」の議論をみていこう。 石井辰彦は、『現代詩としての短歌』所収の「短歌の構造」という論考のなかで、次のように言う。 短歌は三十一前後の音節syllableからなる詩であって、伝統的にそれは、五…

短歌の「調べ」について⑤

前回からの続きである。 堀田季何は言う。 別宮貞徳等が提唱した短歌四拍子説はあながち間違いではないが、全句四拍子で作歌すると初句切れ・三句切れに誘導されやすく、発音すると五七は七五よりも不自然に感じられる。さらに、現代短歌は昔の歌よりも速め…

短歌の「調べ」について④

短歌の「リズム」について議論している。 もともとは「調べ」とは何か、というのが話題であった。 「調べがいい」歌の、その「良さ」には、「リズム」が関係しているのは間違いないのだが、その短歌の「リズム」とは何なのだろう、ということについて議論し…

短歌の「調べ」について③

前回の続きである。 短歌の「調べ」の良さの謎として、「リズム」について議論している。 そのなかで「短歌4拍子説」を紹介していた。 この「4拍子説」の分かりやすい点、というか、ピンとくる点は、現代人のビート感覚を短歌にそのまま当てはめた、という…

短歌の「調べ」について②

明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願い申し上げます。 前回、「短歌4拍子説」を紹介した。 復習しておくと、こうだ。 この説によると、短歌のリズムとは、こうなっている。 すなわち、 ♪♪♪♪♪・・・/♪♪♪♪♪♪♪・/♪♪♪♪♪・・・/♪♪♪♪♪♪♪・/♪…